「は」を入れて2015年03月25日

 近頃小説を読むとき 朗読にしている

 と 感情移入が激しくなって

 作家さんには申し訳ないが勝手に変えたりする

 
 浅田次郎の「赤猫異聞」・・・・上手いなあ ほんと上手い

 前半クライマックス

   「のう、お仙。生きてくれまいか。」
 
   「生きましたとも。仰せの通りに。」
 

 此処ね

   「のう、お仙。生きてはくれまいか。」

 
 
 細かなことですが・・・・楽しみとはこんなもんです

行って来なかったけど・・・巌流島2015年03月17日

 門司港レトロにて

 「何処から来たの」

 「札幌だよ」

 「へぇ~!じゃこれからいいとこ始まるから そこ座って」

 
   諸手の櫂の木剣が風を起こしてうごいた

   巌流の長剣が切っ下りに彼の真眉間を割って来た

   その柿色の鉢巻は武蔵の首かと見えて飛んで行った 

   ニコ と巌流の目は楽しんだかも知れなかった

   然しその瞬間に巌流の頭蓋は小砂利のように砕けていた

   ・・・・・・・・・

   誰か知ろう百尺下の水の心を水のふかさを

   (吉川英冶 宮本武蔵 より)

掌の美2015年01月19日

 写真右の本は古書店で見つけた

 モノズキは気持ちをそそられた

 なんとしても左の本が欲しいと思いやっと手に入れた

 
 これは各々の愛する「掌中の珠」である  から

 手にのる小品ばかりではない

 無論本来は「たなごころ」など他人様に見せるものでもない

 美しさは  愛した人だけのものなのに

 見たがるのである


 
 数年前から此れを拝借し

 「たなごころ ものごころ」と称して

 臆面もなく年賀状に私なりの掌の美を載せている

蒼穹の昴・・・考2015年01月11日


 少しハズレは流行遅れ 十年外れてマイブーム

 「蒼穹の昴」を読んでいる

 浅田次郎と云う人はあざといくらい上手すぎる

 形骸化した王宮と政治とに主人公たちを潜り込ませ
 
 描きたいのは

 熟し腐りかけてもなお枝にしがみついている果実の如く

 列強のカラス達が啄む清の末期

 
 未だ青い維新後の日本が

 日清日露の戦争を控えてやがてどろどろに拘ってゆく


 
 写真は上海租界地区(万博後)

ねむりつながり2014年12月03日

 
 三十代から時代小説にはまって柴田錬三郎ファンだった

 還暦を過ぎたとき蔵書三百冊を処分した

 古本屋のオヤジのひと言

 「柴錬ですか・・・古いね・・・佐伯はないの・・・」

 時代は眠狂四郎から居眠り磐音へと変わっていた

 
 佐伯泰英さん偉いんです

 印税で稼いだんで熱海の「惜櫟荘」を買い取って

 後世に残すための大改修


 世にセレブと言われる方々

 正しいお金の使い方をしましょうね

名短篇から・・・「仙酔島」2014年11月30日

 
 島村利正の端整な文体

 風景あるいは俗習の表現の美しさが秀逸

 
 今は静かに晩年を過ごす信濃の城下町の商家の隠居 ウメ

 店を継いだ夫の酒乱に苛まれる日々に彼岸を迎えるはずだった

 が・・・馴染みの鰹節の行商の男がこの旅先で急死する

 四十年を経て墓の主のことはもうウメしか知らない

 彼が語っていたふるさと瀬戸内の海 鞆の浦

 ここで始めて仙酔島にゆきつく


 この人の文は激しく恋を語らない 胸の奥底の熱い火が

 音もなく心の内に落ちてくる

名短篇から・・・「片腕」2014年10月08日

 
 「伊豆の踊り子」「雪国」の川端康成なのと思うくらい異色

 ある娘から右腕を借りて持ち帰り

 執拗に肩からはずした部分の円みの可憐さを愛くしみ

 終には自分の腕と付け替えてみるに及ぶ

 耽美的な表現は一枚の絵画のような世界

 
 川端がこの作品を書いたと同じ年齢になった

 己の異常さを普通に置き換えられる年齢になった

 でも

 指先から腕につながる全身のほうが普通にいいなあ

名短篇から・・・「サラサーテの盤」2014年07月11日

 内田百閒の不思議な世界

 サラサーテの聲が刻まれてしまったと言うレコード盤を軸に

 ごく普通に日常が描かれる怪異

 ツゥゴイネルワイゼンの名曲が不安を醸す

 
 鈴木清順は映画の世界で増幅させた

 芸術は

 繰り返す 畳み掛ける 増幅させる で 新たなものとなる

 
 ちなみに

 黒澤明の「まあだだよ」は内田百閒がモデルである

座右の書2014年06月14日

 いつもいつも偏った本の読み方をしてきた

 人より早めに老眼になって長編はつらい

 そんな時旅先の本屋で出会った

 手っ取り早く

 近代日本の文学の名作短編を読む

 立派な作りの本じゃないよ

 いわゆる雑誌の作りだけれど

 こりゃあイイと

 間もなく座右の書となった

 その内中身を披瀝しましょ

「宮本武蔵」2014年06月06日

 三十代に吉川英治の「宮本武蔵」を読んで感動して

 繰り返し何度も読んだ

 その前から武蔵ネタは好きだったが

 その後も読んだ

 司馬遼太郎「真説宮本武蔵」
 柴田錬三郎「決闘者」
 津本陽「宮本武蔵」
 光瀬龍「宮本武蔵」
 山田風太郎「魔界転生」
 
 映画も観た、ドラマも観た

 結局

 吉川英治の「宮本武蔵」が好きなのである

 決して「バガボンド」ではない

 吉川英治原作と冠をして脚本を作る皆様

 原作を大切にして下さいね